春日丘の家 Gallery
主要用途  :    専用住宅 構造規模  :     鉄骨造            地上2階 敷地面積  :   321.43㎡ 建築面積  :   157.84㎡ 延床面積  :   238.24㎡   1階  :   137.55㎡   2階  :   100.69㎡ [Photograph] Yoshiharu Matsumura Works に戻る
敷地は駅に隣接する市街地の閑静な住宅街にある。東側道路が歩行者専用道路であるため北側道路の自動車の交通量は少なく、朝夕は駅へと行き交う通勤・通学する人の気配が時折感じられ、日中は道路を挟んで接する小学校からの子供たちの明るい声が聞こえてくる、比較的静かな場所である。
敷地の形状は北東角が鋭角な台形をしており、南側隣地及び東側道路より1m程低くなっている。建物を単純な幾何学形態(L型)とし、且つ、敷地境界に塀を設ける事で、プライバシーを確保しながら敷地の余白に対して開放する、外部を取り込む拡がりのある空間を目指した。
敷地の余白部分を有効利用するため、ビルトインガレージを西側に配置し、北東角の鋭角な部分から建物にアプローチさせる事にした。RC打放し塀に沿ってアプローチし、エントランスコートを見ながら玄関に向かう。ガレージからのアプローチもこのエントランスコートを通る。また、ポーチ部分には春に白い花を咲かせるジューンベリーが配され、入学シーズンの子供たちを優しく出迎える。エントランスコートのヒメシャラと共に、周囲に四季の訪れを伝える。
外部から内部に続く格子天井の玄関を抜けると、垂直方向に拡がるエントランスホールが来訪者を迎え入れる。この空間では、空が断片として切り取られ、生活の中に織り込まれている。時には厳しく、時には優しく白い壁に反射して光が挿入される。水平方向の視線の先には、白いRC塀を背景として色鮮やかに映えるイロハモミジが配されている。また、南面に開口部を設けない事で、コートをパブリックな部分とプライベートな部分とに分ける事ができ、LDKの開放感を高めている。どこの部屋へ行くのにも通る、垂直方向に拡がるこの空間は、リズム感(水平〜垂直〜水平)と緊張感を与える。LDKの引戸を開けると、コートに面したカウンターと一体になったアイランドキッチンが出迎え、外部を取り込んだ水平方向に拡がる、開放感のある空間に入る。LDKに対して斜めに延びる白いRC塀は、プライバシーを確保し、緑や光の背景となると共に、土地の特徴を力強く感じさせる。機能面から洗面脱衣室へはキッチンからの導線とし、さらに浴室・バスコートとつながる。このバスコートは、木製ルーバーとシマトネリコにより視線を遮りつつ、リビングに空間の奥行きを与えている。2階には個室を互いのプライバシーを考慮しつつ、階段ホールより北側には主寝室・書斎と和室を、南側には子供室(2室)を配置した。主寝室と和室は北側外壁面に開口部を設けるのではなく、ルーフテラス、サービスバルコニーに面して開口部を設けて光と風の通り道とし、空間に奥行きを与えた。それらはアルミルーバーを介して、エントランスコート等の緑と上下に緩やかにつながる。
建築に取り込まれた光や緑は、空間に拡がりを生み、空間を可変的なものとする。時間の経過と共に様々な姿をみせるこの空間を楽しみながら穏やかに暮らしていけたらと願う。
【ARIAFINA KITCHEN DESIGN AWARD 2012 グランプリ受賞】