I-House Gallery
主要用途  :    専用住宅 構造規模  :      木造            地上2階 敷地面積  :   332.56㎡ 建築面積  :   116.52㎡ 延床面積  :   173.87㎡   1階  :     94.59㎡   2階  :     79.28㎡ [Photograph] Stirling Elmendorf Works に戻る
敷地は1960年代に開発された閑静な住宅街にある。街の誕生から50年を経た今も高さ制限や外壁の後退距離制限などで、良好な住環境が守られてる地域での建て替えの計画である。既存住宅は、建売住宅などにありがちな外部に対して開くのか閉じるのかが整理されてない住宅であった。外部に対しての距離感を意識しつつ、良好に維持されてきた周囲の環境に圧迫感を与えない伸びやかな住宅を目指した。
東側と南側の2方向が道路に接し、比較的に交通量は少なく、南側の前面道路は歩道もあり幅員がより大きい。人も車も東側からのアプローチとすることで道路からの距離を取り、建物のヴォリュームを北西に寄せて南側に余白を設けた。過去の記憶をつなぎとめるため、南側道路境界の既存の石積土留とキンメツゲの生垣はその形を残して、ガレージのRC塀や列柱は連続性を考慮して生垣の高さと揃え、周囲に対して閉じすぎないようにした。化粧梁現しの緩勾配の大屋根は、ガルバリウム鋼板とピーラーとの素材のコントラストが美しく、高さも抑えられていて柔らかさを感じさせる。
外壁とRC塀との間からアプローチし、前庭を横に見ながら玄関に入ると、エントランスコートや間接照明に演出された空間が迎え入れてくれる。エントランスホールの右には客間である和室を配し、左を向くと階段上部のトップライトからの光を感じながら、天井のピーラーが続く半屋外空間の坪庭に視線が抜ける。LDKは建物南側の庭に対して開放的な空間で、家事導線を考慮してキッチン北側にはパントリー、南側には洗面脱衣所、建物西側にはサービスヤードを配した。LDKにも面した縦格子で区切られた坪庭はバッファゾーンとしての機能を持ち、北側隣地の住宅との距離もあるので風がよく通り抜ける。2階に配された個室は、天井が緩勾配の化粧梁とピーラーでデザインが統一され、それらがクリアボール球に照らされるととても暖かみを感じる。また、南側に面した個室はルーフテラス及びバルコニーでつながり、庭とも上下につながる。
周囲との関係性を意識しながら、シークエンスを挿入し、シーンを散りばめて空間を構成した。長い年月の中で育まれてきた歴史を受け継ぎながら、様々な表情を見せるこれらの空間と身体的コミュニケーションを取りつつ、新たな歴史を積み重ねてくれたらと願う。